恋愛初心者です、お手柔らかに?
「終わった」

定時になり、片付けをしていると、山中課長から声をかけられた。

「永山、悪い。残業出来るか?」

「え?私ですか?」

「あぁ、他の奴は用事があるってさ。お前ないだろ?」

ないだろ?
完全、セクハラ発言ですよね。課長。
言いたい事を飲み込み、私は課長の机の所に行った。

「ほら、やっぱり用事なんてないのよ」
「相手もいないわよね〜」

聞こえてる、って。
外野の声って、ほんとムカつく。

「なんですか?」

私は聞こえないフリをして、課長に話しかけた。

「悪いな。これ、齋藤の見積もりなんだ。頼まれてくれるか?さっきも別件で頼まれたと思うがな。齋藤がきちんと仕事してくれる永山に頼みたいってさ」

「え?齋藤君が?」

にやけてきた。
そんな、きちんと仕事をするって…嬉しい。

「はい!大丈夫です。今日中にやります」

課長から書類を受け取り、上機嫌で自分の机に戻った。

「じゃ、俺は取引先に寄ってから帰るから、永山もそれが出来たら帰ってくれよな。悪いな」

「いえ、大丈夫です」

課長が帰り、営業部で私は一人残業をしていた。
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