恋愛初心者です、お手柔らかに?
「今日はありがとうね、涼子の所に誘ってくれて」

「あ、いや。別に…あの…」

「ん?」

「絢、今日は食べないのか?」

和己さんが、いつもなら何かを頼む私が何も注文しないので、声をかけてきた。

「今日は飲みに来たんです」

「齋藤はいいのか?」

「大丈夫です。永山さんと食べてきたので」

「へぇ、絢とね」

含み笑いをした和己さんと目が合った私は、また後で何かを突っ込まれるであろう、その場の事を想像し、首を振ってごまかしていた。
そんな私を横目に、和己さんは齋藤君の肩を掴むと自分に引き寄せ何かを話しかけていた。
さっき、広樹さんに何かを言われた時と同じような顔が赤くなって、明らかに動揺していた。

「和己さん、何か言ったの?」

「…ん?本人に後で聞け。俺からは言う事はないからな」

何話したんだろう?

いつの間にか、そんな事も気にならなくなっていた。
少し話をしていると、疲れていたのか、緊張が解けていたのか、私はいつもなら酔わないのに、数杯カクテルを飲んだだけで、記憶が途中からなくなっていた。




「好きです、ずっと前から…」

また夢?

ふふっ、どこまで妄想が激しいのかな、私は。
そんなに欲求不満なの?
齋藤君から何度も告白されて、幸せだな。
そう、強くその腕に抱きしめられて…ぎゅーっと。
私もその胸に顔を埋めて…大きな胸…あったかい。
絡みつく足が…

なんだか、リアルな夢だな。




………ん?


夢?


目を開けた私の前に、齋藤君の顔があった。
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