恋愛初心者です、お手柔らかに?
そうだ。
帰ったらいいよ、いや、帰りませんで、押し問答した挙句、駅で電車に乗ろうとした私の手を引っ張り、タクシーに乗せてここに連れてきたんだ。

強引な所があるけれど、そのあとがまた優しかったり。

うん。

「やっぱり怒ってるんですね」

「ちが、違う違う。びっくりしただけよ。私になんか構わなくてもいいのに、って」

「永山さん。俺は、永山さんだから誘ったんですよ。私になんか、って言わないで下さい」

「う、うん。分かった…」

ん?
私だから?
ど、どういう意味?

ダメだ。頭がついていかない。

話変えなきゃ。

「そ、そうだ。涼子ちゃんとは連絡取ってるの?」

「涼子?あぁ、天野ですか?この間、家に行ってきましたよ。そうだ、永山さん、天野に子供出来たの知ってますか?」

「へ〜、子供がぁ…、え?子供って…涼子ちゃん、お母さんになったの?」

「ち、近いですよ。俺は嬉しい…ですけど」

「え?あ、やだ…ごめんなさい」

テーブルから身を乗り出し、齋藤君に近づいていた私は、慌てて座り直した。

「天野とは連絡取ってないんですね」

「だって…個人的には連絡先聞いてなかったし…、ほら旦那さんに転勤で東京離れたでしょ?元々指導員だったから、って事で仲良くしてただけだから、私なんかと友達みたいな関係なんて無理じゃない?」

あ、しまった。
また、私なんか…って言っちゃった。
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