恋愛初心者です、お手柔らかに?
「ごめんなさい、って…本気で言ってるの?言ってくれなきゃ何も分からないよ。絢…俺が年下だからって、バカにしてる?何にも言い返さないのかよ!」

「あの…」

言いたいのに言葉が出てこなかった。そのまま地面を見ていた。

「もう…いいよ」

「えっ?」

仕事場でも聞いた事のない、冷たい声にびっくりした私は顔を上げた。

「あ…ま、待っ…」

待ってと言った言葉は、齋藤君には届かなかった。一度も振り返る事なく、齋藤君は帰って行った。

「…っ、ごめんなさい…」

聞きたい事があるのに、話したい事があるのに、どうして…私は…

膝から崩れ、その場に座り込んでしまった私は、帰っていく齋藤君の後ろ姿を見ていた。



それからどうやって帰ったのか、どれくらい外にいたのかも分からなかった。





「ゴホッ…」

翌朝、降り出した雨に濡れ、風邪をひいてしまったのか朝から咳が止まらなかった。

「熱っぽいな…ゴホッゴホッ…」

額に手をやると、熱かった。

休みたい…そう思ったけれど、自分の感情のまま仕事を投げ出す訳にはいかない。
自分の体調管理不足で、休む訳にもいかない。


家にある風邪薬を飲んで、私は会社に向かった。

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