君と僕のキセキ
プロローグ

プロローグ


 微睡(まどろ)みの中で、震動を察知した。目を薄く開いてみる。見慣れた景色がぼんやりと視界に映った。脳はまだ半分くらい寝ていて、視覚から入って来る情報を処理しきれていない。ここは……どこだっけ。



 寝ぼけ眼(まなこ)で辺りを見回すと、一枚の絵が目に入る。私が幼稚園のときに描いた家族の絵だ。真ん中に立つ私が、その両隣にいる父と母と、手を繋いで笑っている絵。



 しかしそのことは、私が描いた本人だからこそわかることである。線はぐちゃぐちゃで、絵の中の私たちはギリギリ人間の形を保っている状態。クレヨンで塗られた色は、画用紙からはみ出した形跡が見られる。



 何も知らない人が見れば、描かれているものが人間であると判別することさえ困難だと思う。



 要するに、一般的な絵心のない幼稚園児の絵だ。

 私が絵を幼稚園から持ち帰ると、その日の夜に父が玄関に飾った。飾られたその絵を見るたび、私は嬉しく思っていたけど、小学生に上がってからは少し恥ずかしくもあった。



 この絵が飾られているということは、私が今いる場所は自宅の玄関のようだ。それに、いつもより視線の位置は高い。どうして、私はこんなところにいるんだろう……。



 昨夜は、テレビを見ていたら眠くなり、母より先に布団に入った。これが、意識のある私の最後の記憶。

 胸からお腹にかけて温もりを感じた。誰かに背負われている。そのことに気付いた瞬間、私は体をビクッと震わせた。
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