君と僕のキセキ
狭い道を抜けて鳥居をくぐる。神社に初詣以外で訪れたのは、これが初めてだろうか。七五三のときにお参りした可能性もあったけど、よく覚えていない。少しだけ非日常的な気配を感じる。
走って来た道よりは街灯の密度が高く、拝殿や賽銭箱がうっすらと見えた。
辺りを見回しながら、ゆっくり大きな樹木に近づく。しかし、先ほど見た、あの強烈な光と対面することはできなかった。
樹木の周りを中心に捜索する。頼れる灯りが街灯しかないため、その作業は難航を極めた。
スマートフォンくらい持ってくればライトの代わりになっただろう。何も考えずに出てきたことを少し後悔した。
それから数分間、捜索を続けたものの、見つかる気配はない。
走って温まった体も冷えてきた。おそらく、すでに日付は変わっているだろう。
無謀だということは気づいていた。
大きさも形もわからない何かを探している。手がかりは、この辺に落下したように見えた、という不確かなものだけ。燃え尽きてなくなっている可能性もある。
そもそも、見つけてどうするのだろう。興味と好奇心だけで探すには、そのコストに見合った何かが得られるとは思わない。
諦めて帰ろうとしたその時、一瞬だけ、小さな光が見えたような気がした。振り返ると、植え込みがぼんやりと光っている。
その柔らかい光は、僕に呼び掛けているようだった。
枝と枝の隙間に手を突っ込んで、僕は〝それ〟を掴んだ。
肘の辺りまで植え込みに飲まれた腕を引き抜いて、握った手を開く。
〝それ〟の正体は、五センチくらいの石だった。