君と僕のキセキ
「付き合ってから何ヶ月かはすごく楽しかった。中学生だから、学校から一緒に帰ったり、休みの日にファミレスに行ったりするくらいだったけどね。……でも、徐々にその人は私に対して素っ気なくなってきた」
疑いようもなく幸せだったエピソードに、暗雲が見え始める。
「それでも、当時の私は彼のことが好きだったから、必死でいい彼女になろうって頑張ってた。でもある日、彼が友達と話してるところを偶然通りかかって。そしたらちょうど、私のことを話してる最中だった。そこで、こう言ってたの。『あいつは顔は可愛いけど、一緒にいて楽しくない。隣に並べて歩く用』って」
僕は絶句した。どうすれば、そんな不誠実な発言ができるのだろうか。中学生だからといって、許容されることではない。実際に、心に傷を負った女性が僕の目の前にいるのだ。しかも、〝用〟と言うからには、別に付き合っている人がいた可能性もある。
「その言葉は、たぶん一生忘れられない。向こうも、私が気づいてることに勘づいてたんだと思う。最終的には、お互い連絡しなくなって、自然消滅した」
同情も励ましもその男に対する怒りも、経験した本人の目の前では何の意味も持たなくて。僕は何も言えず、明李さんの話を黙って聞くことしかできなかった。
「きっとその人は、私のことが好きだったんじゃなくて、私っていうアクセサリーと並んで歩いてる自分が好きなだけだった。そのことがすごく悲しくて。また同じような気持ちを味わうくらいなら、もう恋愛なんてしなくていいやって」
残念ながら、僕には恋愛でそういったトラブルを抱えた経験がない。だから、明李さんの苦悩は想像することもできなかった。そのことがとても悔しい。