君と僕のキセキ
「よし! 決めた!」
僕は宣言する。
〈いきなり何?〉
「クリスマスまでに告白する」
〈え?〉
「いつまでもこのままじゃダメだ。明李さんに想いを伝えて、きっぱりフられてくる!」
〈ちょっと! フられてどうすんの!〉
「最悪の場合を想定してないと怖くて……」
〈ああ、もう! どこまでも小心者なんだから! そんなんで宇宙に行けると思ってるの?〉
伊澄が僕をなじる。
「今は宇宙は関係ないだろ⁉ それに、宇宙に行くなら慎重すぎるくらいの方がいいんだよ」
僕も負けじと応戦する。
〈はぁ、これだから宇宙好きは……〉
ただ単に憎まれ口を叩いているのかと思ったが、伊澄の口調はどこか冷たかった。まるで、彼女の身の回りに僕以外にも宇宙好きがいるかような言い方だったのも気になる。
「何か、宇宙に関して嫌なことでもあるの?」
記憶の隅に引っかかっていた、彼女の父親が宇宙飛行士であるという事実を、僕はかろうじて思い出す。それと何か関係があるのだろうか。
〈……もしもキミが、将来宇宙飛行士になったとする〉
「うん」
いきなり突き付けられたもしもに戸惑いつつ、真剣な彼女の声に耳を傾ける。
〈大事な家族がいる。綺麗な奥さんと、まだ小学生になったばかりの娘。そんなとき、大きなプロジェクトに誘われた。宇宙の、まだ誰も見たことがない場所に行く。でも、十年くらい家族と会えない。連絡もとれない。もしかすると、生きて帰れる保証もないかもしれない。キミならどうする?〉
明言は避けているが、きっと伊澄の父親の話なのだろう。今にも震え出しそうな声からは、父親に向けられた様々な感情が痛いほどに伝わってきた。
一分、もしくはそれ以上たっぷりと考えて――僕は、僕自身の答えを導き出す。