君と僕のキセキ
22.混乱
〈やっぱり諦めなよ〉
光った石から聞こえてきた言葉は、要領を得ないものだった。
だから僕は、
「何を?」
そう聞き返したのだが、次に伊澄が口にした台詞は、僕を大いに驚かせた。
〈その、明李さんって人のこと。もう諦めた方がいい〉
「……どうして。そんな……いきなり」
戸惑いながらも、僕は問いかける。
伊澄はずっと、恋愛初心者の僕のうんざりするような相談に、真剣に応じてくれていた。
彼女がいなければ、僕は明李さんに何も伝えることができなかった。確実にそう言える。
〈今まではちょっと無責任に応援してきたかもしれないけど、ちゃんと考えてみたら、やっぱり無理だと思う〉
伊澄らしくない発言に、僕は一層当惑する。
「それでもいい。だけどせめて、気持ちは伝えなきゃ――」
〈バイト先の後輩、キミのことが好きなんでしょ。その子にしておけばいいじゃない!〉
僕の発言を遮るように返ってきたのは、筋違いな意見だった。
「いや、まだそうと決まったわけじゃないし……。それに、今僕が好きなのは明李さんで――」
〈全然好きでもない人から好意を向けられても迷惑なの!〉
僕との会話の中で、伊澄がこんな風に声を荒げたのは初めてのことだった。
「どうしたの、伊澄。今日、何か変だよ。体調でも悪いの?」
明らかに、様子がおかしかった。
〈とにかく、その子の気持ちもちゃんと考えてあげて。しっかり向き合って〉
先ほどとは異なり、切実さをはらんだ声で彼女は言った。