君と僕のキセキ

 伊澄と会話を終えたあとも、僕は小屋にいた。彼女と話していた時間はわずか数分で、昼休みが終わるまではまだ時間があった。



 伊澄の不可解な態度はもちろんなのだが、僕の懸念していることは他にもあった。明李さんに気持ちを伝える日が、明日に迫っているのだ。今日は伊澄にそのことを相談しようと思っていたのに……。八方塞がりだ。



 いっそ、明李さんに気持ちを打ち明けるのはやめにしてしまおうか。

 どうせ上手くいくはずなんてないし。伊澄にも止められている。せっかく仲良くなったのに、今の関係を壊したくない。



 そんな風に言い訳を並べてみても、明李さんへの想いが影をひそめるわけではなかった。告白しない未来を僕が選んだとしても、後悔することは簡単に予想できる。



 胸の内で悩みを転がしていると、ポケットのスマホが震えた。

 取り出して画面を見ると、バイト先の店名が表示される。

「もしもし」

 通話状態にして、耳に当てた。



『ああ、時光くん』

 店長の声だ。来店を示すベルの音や、客たちのものと思われる話し声も、かすかにではあるが聞き取れる。
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