君と僕のキセキ
「うるせぇな。どうせ見た目だけの女だろ!」
仲間の前ということもあって、引っ込みがつかなくなったのか、開き直って罵倒し始める。
「違う!」
こんなヤツに明李さんは絶対に渡さない。二度と明李さんの前に現れるな。
「朽名さんは、普段から何事にも真剣で!」
大学紹介のパンフレットに写っていた明李さんの真摯な眼差し。
「でも本の話になると人が変わったように饒舌で!」
僕に喋る暇も与えないまま、語り続ける明李さんの輝いた目。
「ちょっと強引なところもあって!」
去年の五月、初めて会ったときに明李さんに振り回されたことを思い出す。
「美人なのにそれを笠に着ることなく、僕みたいなぼっちにも優しくしてくれる素敵な人で!」
そんな明李さんのことが、僕は――
「そんな明李さんのことが、僕は大好きです!」
自分でも、なぜそんなことを言っているのか全くわからなかったけれど、吐いた言葉は紛れもなく本心だった。
「なんなんだよコイツ」
「意味わかんねえ」
「おい、もう行こうぜ」
男たちは食べかけの昼食が載ったお盆を持ち上げると、逃げるように二階席へ連れ立って移動した。明李さんを狙っていたゲス男も「何マジになってんだよ」などと呟きながら、バツが悪そうに去って行った。