君と僕のキセキ

 他に誰も知らない場所で、ひっそりたたずむボロボロの小屋。適度な狭さも相まって、まるで秘密基地のようだ。

 たくさんの人がいる大学内で、この場所を知っているのは僕だけかもしれないという優越感が、胸を躍らせる。



 いつまで経っても少年の心を忘れることができない。僕を含めた男の大半は、きっとそういう人種なのだ。



 錆びついたパイプ椅子に腰かけると、金属が軋む音がする。この椅子は、元から小屋の中にあったものだ。

 朝のうちにコンビニで買っておいたパンを一口かじると、口の中にほんのりと甘さが染み渡った。



 僕がなぜ、こんな辺鄙(へんぴ)な場所で一人で食事をしているのかというと、やむを得ない理由や深い事情があるわけではない。ただ単に、昼食を一緒に食べる友人がいないのである。それだけだ。



 大学というのは非常に恐ろしい場所で、入学してすぐに自分の居場所を見つけなければ、いわゆる〝ぼっち〟というものになってしまう。



 この残酷極まりない事実を知ったときには、僕はすでにぼっちになっていた。手遅れというやつである。こんな重要なことは、高校の授業で教えておくべきではないか。僕みたいな人間をこれ以上出さないためにも、文部科学省に提案したい。
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