君と僕のキセキ
弁当はすでに半分以上食べ終わっていた。
考えることに疲れてしまった私は、流れ行(ゆ)く雲を眺めて、頭の中を空にする。
じわりじわりと、悲しみが押し寄せてきた。胸にあった後悔と混ざり合って、陰鬱な気持ちが全身にのしかかる。私の周りだけ重力が強くなっているような、そんな感覚さえ覚える。
存在したはずの幸せを、私は奪ってしまったのかもしれない。
不思議な彼との出会いは、私に何をもたらしたのだろう。
一週間前の会話でさえも、すぐには思い出せずにいる。出会った頃の記憶はもう、夢の中の出来事のように不鮮明だった。
バッグに付けられた石を手のひらに乗せた。石にはひびが入っていて、今にも割れてしまいそうだった。
そのひびが、私と彼の関係を象徴しているように思えて、鼻の奥がツンとする。両手で強く握りしめた。
来週にはもう、この石の不思議な力はほぼ完全に失われてしまいそうな気がする。私は直感的にそう思った。
もしかすると、もう二度と彼の声が聞けないかもしれない。あれが最後の会話になるなんて嫌だった。
もう一度、彼と話がしたい。都合が良すぎるのはわかっている。突き放したのは自分なのに。
箸の扱いも満足にできないほどに手もかじかんでいる。そんな寒さの中、このベンチにいるのは、何かを期待しているからだろうか。
もう一度話したかった。
彼に謝りたかった。
そして、私と彼の関係を打ち明けてしまいたかった。
「……ごめんなさい」
弱々しく呟いた瞬間、
――石が淡く光った。
見間違いかと思って目を擦ったが、やはり石は微かながらも輝きを発していた。
今日は金曜日。宗平は今日、彼女と食事をしているはずなのに……。
〈伊澄、そこにいるの?〉
聞こえた声は、確かに彼のものだった。