君と僕のキセキ
27.世界で一番大事な人
息を切らしながら小屋へ入り、すぐにバッグからお守りを取り出す。
巾着越しでは光っているかどうかわからないほどに、石の発する輝きは弱くなっていた。
「伊澄、そこにいるの?」
お守りから石を取り出して、口元に持っていき、僕は問いかける。
頼む。間に合ってくれ。
〈……いるよ〉
小さい声ながらも、応答があったことにホッとする。
「よかった」胸を撫で下ろして「伊澄、バカなことはやめろ!」
僕らしくない、はっきりとした強い口調で言った。
〈……バカなことって?〉
答えまでの微妙な間が、僕の予想が当たっていたことを物語っていた。
「だから、その……とにかく、大丈夫だから。今はつらいかもしれないけど、これから絶対いいことあるから。……って、ありきたりな言葉だけど、そういうんじゃなくて。伊澄はすごく真面目で優しいから、心の底からそう思ってて。それで、こんなこと言ってるわけであって……」
焦るあまり、自分でも何を言いたいのかわからなくなってくる。
それでも、僕が思うことはただ一つ。
伊澄にはちゃんと、前を向いて生きていてほしいということで。