君と僕のキセキ
僕と伊澄の真面目なところは似ていると思っていたが、父娘(おやこ)なのだから当然なのかもしれない。
〈今から十年前、つまりそっちだと十二年後、になるのかな。私が小学一年生のとき、キミはとある研究チームに配属されて、遠くへ行ってしまった。極秘任務みたいな仕事で、内容は私はわからないんだけど〉
伊澄が、当時を懐かしむように言った。
〈とにかく、宇宙について調べたり宇宙に行ったりするの。でも、地球との連絡はなし。いつ帰れるかもわからない。安全もたぶん……保証されてない〉
彼女の話を、僕は黙って聞いていた。
〈もう十年間、キミは帰って来てない。もちろん連絡もない〉
この話は、伊澄が僕と明李さんを引き離そうとした理由と関係あるのだろうか。そんなことを考えた次の瞬間、答えが出た。
〈お母さんがね……最近すごくつらそうな顔をしてるの〉
なるほど。そういうことか。ここまで聞いて、ようやく話が見えてきた。簡潔に言ってしまえば、僕のせいで明李さんが寂しい思いをしているということだった。
つまり、僕と明李さんが恋人同士になることを阻止すれば、伊澄の世界、つまり僕から見れば未来の明李さんは、ずっと帰って来ない夫を待ち続ける必要もなくなるというわけか。
「寂しい思いさせてごめん! 先に謝っておく。でも、僕はちゃんと帰る」
〈でも――〉
「僕がどれだけ明李さんのことが好きか、伊澄が一番良く知ってると思う。だから、僕を信じてほしい!」
〈……本当に、信じていいの?〉
「うん。約束する」