君と僕のキセキ
今の僕が、勝手にそんなことを約束してしまっていいのだろうか。
伊澄との記憶は全て忘却の彼方へ消え去って、未来の僕は今交わした約束など一ミリたりとも覚えていない。そのことを、とても不安に思う。
それでも、明李さんへの気持ちはきっと、未来の僕も負けていないはずだ。
世界で最一番大事な人は、何年後かに二人に増える予定で、彼女たちに寂しい思いをさせたくないから――。
「だから、僕を信じて、元気で待ってて」
〈わかった。あの……ごめんね。あんなこと言って〉
昨日のことだろう。理由がわかった今、彼女を責める気にはなれなかった。
むしろ、無自覚とはいえ、伊澄のことをこんなに悩ませてしまっていた自分が情けない。
「うん。僕は大丈夫」
〈実はね、消えてしまいたいとか、もうどうにでもなっちゃえって、そういう気持ちも、実はちょっとだけあったの〉
申し訳なさそうに、彼女が言った。
まだ学生の僕には、こんなとき、高校生の娘にどんな言葉をかけてあげればいいのかわからない。大人になっても、わからないままかもしれない。
だから僕は、思ったままを口にする。
「伊澄はさ、何も知らない僕から見ても、すごく素敵な人だって思った。だから、そんな伊澄を育てた未来の自分を褒めてあげたい。あと……もっと、自分を大事にしてほしい」
〈うん……ごめん〉
「そうだ。僕、明李さんにちゃんと伝えたよ」
あえて、付き合うことになったことは言わない。
〈そっか。おめでとう〉
伊澄も、結果を聞くことなく祝福の言葉を口にした。昨日、反対していた人間とは思えないほどに、優しい声音で。