君と僕のキセキ
とある十二月の金曜日。
「叶蓮(かれん)、大丈夫? 顔色悪いよ」
心配そうに顔を覗き込まれる。休み時間に、前の席に座る友人と話していたときのことだった。
「うん。ちょっと疲れてるだけ」
朝から喉が痛く、体がだるい。どうやら、風邪を引いてしまったようだ。
学校を早退するか迷う程度に頭が痛い。しかし、放課後にはバイトが入っている。このときは、そのうち良くなるだろうと高をくくっていた。
その考えが甘かったことを知るのは、午前中の授業が終わった頃だった。
昼休みに、店に電話をかけた。体調がさらに悪化し、まともに働けそうになかったからだ。
誰か他の人に頼めないかということを相談する。結局、連絡が遅くなり、迷惑をかけてしまった。ギリギリまで粘った私の責任だ。もし誰もいなかったら出ますとは伝えたが、できるならゆっくり休みたかった。
代わりの人を探してもらえることになった。その上、私の不手際を怒るでもなく、心配までしてくれた。店長に礼を述べて電話を切る。
自己嫌悪に陥りながら、折り返しの連絡をボーッと待つ。
数分後、店から電話がかかってきた。
『時光くんが入ってくれるって。だから今日はゆっくり休んで』
「わかりました。ありがとうございます。本当にすみません」
『いいって、いいって。それより、あんまり無理しようとしないでよ』
「はい。本当にありがとうございます」
友人がバイト先の愚痴を話すのを何度か聞いたことがある。聞いているこちらまで憤りを覚えるような内容もあった。彼女たちに比べると、私は間違いなく恵まれているのだろう。