君と僕のキセキ

 授業をどうにか最後まで受けて、家に帰ると私はすぐに寝た。疲れていたこともあり、すぐに意識を手放した。



 起きると、もう少しで私が入る予定だったバイトが終わる時間だった。体調はかなり良くなっていた。



 罪悪感と感謝の気持ちで胸がいっぱいになる。

 同時に、先輩への想いが溢れてきた。



 先輩に告白するなんてことはなかったし、これからもないと思っていた。今の関係性を壊してしまうリスクを考えると、とても怖い。



 仲の良い先輩後輩というつながりだけで十分だった。

 いや、十分だと思っていたのに。



 風邪で弱っていたからかもしれない。

 先輩に、私の気持ちを伝えたかった。

 

 今なら、言える気がした。そして、このタイミングを逃してしまったら、もう二度と伝えられない。そんな予感があった。



 服を着替え、コートを羽織る。

 ついでに、胸に秘めた決意と、失恋する覚悟で全身を武装した。



 勇気を振り絞って、先輩に私の気持ちを打ち明けた。

 しかし、奇跡が起きるわけでもなく、私の恋の結末はありきたりなものだった。



 先輩には好きな人がいた。私が先輩のことを想っているのと同じように、先輩はその人のことが好きで。



 悲しくなかったわけではない。先輩への想いがなくなったわけでもない。けれど、気分は晴れやかだった。



 自己満足と言われればそうかもしれない。それでも、一つの恋をちゃんと終わらせることができたのだ。

 またいつか、素敵な人に出会って、素敵な恋をしたい。そう思った。
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