君と僕のキセキ
もちろん、僕だってまったく友達がいないというわけではない。
高校時代に仲の良かった友人たちと、長期休暇などに集まることもある。だが、彼らは進学先の大学でも交友関係を広げているようだった。サークルの飲み会や寮の鍋パーティのことを話す彼らは、とても楽しそうだった。
そもそも、大学には勉強をするために通っているのだ。別に、友達作りは学士の学位取得における必修科目ではない。
そんな言い訳をしているうちに、結局一人でいることに慣れてしまった。そしてこれからも、僕のキャンパスライフは灰色で塗られ続けていくのだろう。
大学が人生の最終地点ではない。まだまだ先は長いのだ。真面目に生きていれば、いつかきっといいことがある。
明るい未来を心から願って、僕は二つ目のパンを食べ始める。
ひびの入った窓ガラスから見える木々の並び方すら覚えてしまった。枝のみの寂しい姿だったそれらは、やがて葉をつけ緑に染まり、色づき散ってゆく。
この場所から見える、季節と共に訪れる変化は、もうすぐ一周する。
今日も、暖色に彩られた木の葉がひらひらと、風に揺られながら舞い落ちる。
そんな何でもない、いつも通りの日常に――。
何の前触れもなく、不思議な出来事はやってくる。
突然、透き通ったメロディが僕の耳に届いた。それは聞き覚えのある旋律で、曲名を思い出すまでに三秒もかからなかった。
誰かが、鼻歌を歌っている。