君と僕のキセキ

 大学の五限の講義をサボってやってきた隣町のショッピングモール。その広場には、大きなクリスマスツリーが設置されていた。これ見よがしにちかちか光る電飾が、俺にプレッシャーをかける。



 県内最大級なだけあって、様々な種類の店が立ち並んでいる。

 彼女へのプレゼントを探すうちに、モール内を一周しようとしていた。良さそうな店は何件か見つけたものの、商品までは見れていない。



 プレゼント選びに向いていそうな雑貨屋の、パステルカラーを中心とした装飾やファンシーな雰囲気が、男性一人での入店を躊躇わせるのだ。

 このままだと、閉店までモール内を巡回しているだけで終わってしまいそうだ。



 きっと俺なんて、ただの先輩としか見られていない。さっさと諦めた方がいい。彼女に喜ばれそうなプレゼントが見つからないのだって、きっとそういうことだ。

 そんなネガティブな思考に支配されながらも、俺は望みを捨てきれないでいた。



 買うものがある程度決まっていれば、少しは入りやすくなるだろうか。

 彼女の好きなものといえば、漫画、猫、オレンジジュース……。それに……星。



 彼女は、よく空を見上げている。そのときの、彼女の切なそうな表情が脳裏に浮かんだ。



 次の瞬間、俺は視界の隅に星を捉えた。

「あっ!」

 たった今すれ違った女性が、俺の声に反応して振り向く。目元の涼し気な、綺麗な人だった。三十歳くらいだろうか。



 その女性の持つバッグには、星のキーホルダーがついていた。俺が思わず声を上げてしまったのは、そのキーホルダーが彼女のイメージにぴったりだったからだ。

 彼女が通学用の鞄にそれを付けている風景が、ありありと浮かぶ。
< 160 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop