君と僕のキセキ
「何か?」
警戒の色が含まれた視線を浴びる。女性からしてみれば、見知らぬ男に凝視されているのだから当然だろう。
何もなかったフリをして歩き去ることもできた。そうしなかったのは、星があまりにも綺麗だったからだ。
「あ、えっと……そのキーホルダー……」
これじゃあただの不審者だ。
しかし、
「ああ、これ? 綺麗でしょ」
女性の口元には笑みが浮かんだ。ひとまず安堵する。
「あの、差し支えなければ、どこで購入したかとか、お値段とか、教えていただけませんか。あ、すみません突然。実はクリスマスプレゼントをあげたい人がいるんですけど……まだ片想いで。それで、そのキーホルダー、すごくいいなって思って……」
支離滅裂な上に、言わなくてもいい情報まで口から滑り落ち、顔が熱くなるのを感じる。
女性は事情を飲み込んでくれたらしく、ふふふ、と柔らかい笑みを漏らした。
「そうなんだ。これ、私もすごく気に入ってるの」
鞄に付けられているキーホルダーをつまんで、愛おしそうに見つめる。
はっきりと星を形成しながらも、角は丸みを帯びていて可愛らしい。厚みは五ミリ程度だろうか。内部がくりぬかれているのも洒落ているように思う。よく見ると、少し錆びている。昔からずっと愛用しているのかもしれない。
「素敵ですよね。で、どこに行けば買えますか?」
「申し訳ないけど、それは教えられないの」
誰かからもらったりとか、数量限定のものだとか、そういうことだろうか。〝教えられない〟という表現が少し気になったけれど、見ず知らずの他人にそれ以上あれこれ聞くのも失礼だ。
「そう……ですか」
残念だが仕方がない。何か別のものを探そう。
女性は、意気消沈して踵を返そうとする俺に向かって、
「実はこれ、私のハンドメイドなんだ」
と、得意気に微笑みかけた。