君と僕のキセキ
「そう。高校生のときの話なんだけどね。私も好きな人がいた。このキーホルダーは当時から付けてて、その人に褒めてもらったものなの。そのおかげで、私はこうしてアクセサリーを作る仕事をしてる。彼の何気ない言葉で、人生が変わったの」
過去に思いを巡らせるように、遠い目をしながら女性は話した。
「で、その新作は、原点回帰って意味も込めて作ってみたんだ。そしたらこのタイミングで、あなたに声をかけられて。ねえ、こんな素敵なことってある?」
なぜかその話を聞いて、俺はネックレスを譲り受ける気持ちになった。
「ちなみに、その人には告白したんだけど、ダメだった」
失恋した思い出を語っているはずなのに、女性はなぜか嬉しそうだった。
「けれども、私はちゃんと気持ちを伝えられたし、伝えてよかったと思ってる」
だから、あなたも頑張って。言葉にはしなかったが、そうのような意味が込められていることはわかった。
結局、俺はネックレスを譲り受けることになった。せめてものお礼として、コーヒー代を払わせてもらう。
「お姉さんのおかげで、ちゃんと気持ちを伝えることができそうです。今日はありがとうございました!」
カフェを出て、改めて礼を述べる。
「うん。頑張って。それと私は、もうすぐ四十歳のおばさんよ」
最後の最後に衝撃の発言が飛び出して、俺はちょっと女性が怖くなった。