君と僕のキセキ

 クリスマス当日。イルミネーションを見ながら二人で歩いて、ちょっとだけお洒落な店でご飯を食べて。



 そんな、何の変哲もないデートだったけれど、私は満たされていた。

 好きな人と一緒に過ごす。ただそれだけで、今日という日が特別な時間になった。



「ちょっと時間ある?」

 お店を出ると、先輩が尋ねた。

「はい」

 私も、先輩ともっと一緒にいたかったので、断る理由もない。



 人気(ひとけ)のない公園。二人で並んでベンチに座る。

 街灯に照らされた先輩の顔が、赤くなっているような気がした。



「これ、どうぞ」

 相馬先輩が、私に何かを差し出した。受け取ったそれは、縦長の白い箱だった。



「空けていいんですか?」

「うん」



 箱を開くと、星型のネックレスが姿を現した。厚さ五ミリ程度の平べったい形をしていて、内部も星型にくりぬかれていた。



「……綺麗」

 そんな感想が自然と漏れる。



「実は、今日こうして時光さんのことを誘えたのも、このネックレスのおかげなんだ」

「え?」



「何かプレゼントを渡そうと思ってて、探しに行ったんだけど、なかなかいいのがなくって。もう時光さんのことは諦めようかと思ってたんだ」



「で、帰ろうと思ったら――」

 先輩は、ネックレスを手に入れた経緯を話してくれてた。



 私に似合いそうな星のキーホルダーを見つけたこと。それを付けていた女性がアクセサリーデザイナーだったこと。その女性が先輩に不思議な縁を感じて、ネックレスを譲ってくれたこと。



「じゃあ、まだ正式に売られてないものってことですか?」

「そういうことになるね」

「すごい……。大事にします!」

 ネックレスを握り締めて、胸の前に抱く。
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