君と僕のキセキ
プロジェクトに携わって五年が過ぎた頃。
宇宙で、僕は不思議な石に出会った。
目の前に突然、白い石が現れたのだ。
空間を飛び越えてワープしてきたかのように。
漂っていたその石を手にした瞬間、電撃のようなものが頭に流れた。
一瞬だけ、大切な何かを思い出した。
が、次の瞬間には全てを忘れていた。
石は、出発直前に娘に渡したお守りにとてもよく似ていた。
娘はもうすぐ、小学校を卒業する。
学校は楽しめているだろうか。勉強にはついていけているだろうか。部活はどうするのだろうか。
基本的に家族との連絡は取れない状態だったが、命に関わる事態が会ったときにのみ、例外として知らされることになっている。便りがないのはよい便りだ。
そんなことを考えていたら、手の中の感覚がなくなった。
手を開くと、さっき拾ったはずの石は忽然と消えていた。
驚きはそれほどなかった。
宇宙空間は、地球の物理法則が通用しない特別な場所だ。
きっと石は、必要な人のところへ向かったのだろう。
長期にわたる極秘任務が終了した。
物理法則の通用しない場所、まだ知られていない物質など、宇宙に関して、公になっていない新事実がいくつか発覚した。
そのうち世間にも発表されるだろう。
僕自身も、幼い頃からの夢を叶えることができ、非常に満足だ。
家族と会えなかったことは少し、いや、かなり寂しかったけど。
早く会いたい。
そんな気持ちで、駅から家までの道を早足で歩く。まだ、帰るという連絡はしていない。
妻と娘は、突然返ってきた僕を見て、どんな反応をするだろうか。
僕は、約十年ぶりに我が家の玄関をくぐった。