君と僕のキセキ
その中でも特に、SF小説がお気に入りだった。
想像の及ばない遥か未来の話。時間や空間を飛び越えた出会い。宇宙や並行世界を舞台にした壮大な世界。そのどれもが、僕の心を大いにくすぐった。
大学に入ってからは、以前よりも自由に時間が使えるようになった。友人もおらず、サークルにも所属していない僕の増えた時間は、必然的にページを捲る時間へと変わった。
その結果、常に面白い物語との出会いを探し求めて、生協の書籍購買部へと足繁く通うようになった。
明李さんと出会ったのも、書籍購買部だった。
ちょうどその日は気になっていた本の発売日で、僕は授業の入っていない空き時間に、書籍売り場に向かっていた。
気になっていた本というのは、とある有名なミステリー作家の作品だった。ハードカバーで何年か前に出ていたものが文庫化するということで、興味を持ったのだ。
今まで作者の他の作品は読んだことがなかったが、その作品にはSF要素が入っているらしい。
また、作者本人が理系の学部出身ということもあり、以前から気にはなっていたのだ。
出す本が必ずと言っていいほどベストセラーになるような作家で、作品数も多く、どこから手を付ければいいか迷っているうちに数年が過ぎてしまっていた。
そんなわけで、今回の作品をきっかけに手を出してみようと思った。