君と僕のキセキ
目的の本を探しに、文庫の新刊コーナーへと向かった。
新しく入荷したばかりの本が、平台に整然と並べられた中で、その本は一冊だけ残っていた。入荷数が少なかったのだろうか。それとも、売れてしまったのだろうか。
タイトルと著者名が大きく印刷された比較的シンプルな表紙に、読者の期待を煽るインパクトのある帯。面白そうだ。直感的に思った。
購入することはほぼ決定していたが、あらすじも一応確認してみよう。僕がその本を手に取ろうとした瞬間、横から一本の綺麗な腕が伸びてきた。
「っと。すみません」
僕は反射的に腕を引いた。それと同じタイミングで「ごめんなさい」という女性の声とともに、隣の腕も引っ込んだ。
僕は視線を上げ、相手を見る。
心臓が大きく脈打った。
恐ろしいほどに整った顔がこちらを見ていたからだ。
陶器のような白い肌に、黒目がちで愛らしい目と鼻梁の通った小ぶりな鼻、潤った薄紅色の唇がバランスよく配置されている。全体的に華奢な雰囲気であるが、身長は百六十近くありそうだった。肩のあたりまで伸びた黒い髪は、見ただけでサラサラだとわかる。
美人。そんなありきたりな言葉ではとても形容できないほどに、非常に美しい女性がそこに立っていた。