君と僕のキセキ
 空港のエントランスをくぐる。

 見えやすいように高い場所に取り付けられた時計は、午前六時半を示していた。いつもなら、私は夢の中にいる時間だ。



 仕事上、私の父は昔から色々な場所へ出向くことが多かった。一ヶ月や二ヶ月、そこに滞在することもざらだ。一年間、帰って来なかったこともある。



 父は宇宙を専門とする科学者で、様々な国の人と共同でチームを組み、未知の世界を研究している。何度か宇宙に行ったこともあるらしい。自らの職業に誇りを持っている父を、私は尊敬している。



 父が長期間の出張に行くとき、玄関先で見送ったことは何度かある。しかし、空港にまで同行したのは初めてだった。私が小学生になったからだろうか。それとも――。



「悪いな、わざわざこんなところまで見送りに来てもらって」

「ううん、気を付けてね」

 父と母の穏やかな会話。この二人はいつも、言葉以上の何かをやり取りしている。今だって、短い会話の中に、私にはわからないいくつかの感情が込められていた。



 お互いに伝えたいことを、正確に渡したり、過不足なく受け取ったりすることができる。

 私はそんな両親のことが好きだったし、羨望の念を抱いていた。
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