君と僕のキセキ
6.孤立した少女
今日の朝、教室に入って麻帆(まほ)にあいさつをしたら反応がなかった。そのときは聞こえなかっただけだろうと思ったけど、三分後に教室に入って来た愛香(あいか)にも無視されたところで、私がハブられていることに気付いた。
愛香は私のすぐ横を通り過ぎて、麻帆の席へ近づいた。楽しそうに笑っている麻帆と愛香を見て、私は足元がぐらつくような感覚にとらわれた。
原因はわかっていた。
私は、正しすぎるのだ。そして、正しすぎるがゆえに間違ってしまう。
この世界は、私のような真面目な人間に対して厳しかった。
女子高生というのは、集団で行動する生き物である。クラス内でグループを作り、トイレに行くのもご飯を食べるのも常に一緒だ。
私と愛香と麻帆と由芽(ゆめ)の四人グループに、昨日、ちょっとした事件が起こった。
昼休みに、いつも通り四人で昼食を食べていたときの出来事だった。
由芽が、とあるロックバンドをけなす発言をしたことに対し、愛香の表情が曇った。
「そのバンド、私は好きなんだけど」
「あ……ごめん」
由芽は愛香の表情を見て、顔を真っ青にした。
愛香は、私たちのグループのリーダー的存在だった。
「由芽と私たち、明日から別々だから」
愛香にそう告げられた由芽は、今にも倒れてしまうのではないかというくらい、絶望的な表情をしていた。
高校生にとってその一言は、死刑宣告に等しい。