君と僕のキセキ

 昼休み、私はスクールバッグを持って教室を抜け出した。一人で昼食を食べることに、また、他のクラスメイトにその様子を見られることに、耐えられそうになかったのだ。

 校門を出て学校の近くの公園へ向かった。



 道路を挟んで高校の反対側にある星野公園は、それなりに広く自然豊かな場所である。季節ごとに様々な種類の花を見ることができ、県内でも有名な観光スポットとなっていた。



 適当に歩いていると、コスモスが一面に咲いているのが見えた。景色が薄いピンク色に染まって、心が奪われる。

 綺麗な秋を眺めながら、人が歩くために整備された道を一周すると、少しだけ、気持ちが軽くなったような気がした。



 そろそろお昼ご飯を食べなくては、授業に間に合わなくなってしまう。どこか落ち着ける場所はないかと、座れる場所を探すうちに、ちょうど良さそうなベンチを発見した。私はそこに座る。



 果たしてこの日、私がクラスで孤立したことは、昼休みにこの公園へやって来たことは、広い公園の中でこのベンチに座ると決めたことは、ただの偶然だったのだろうか。そう疑ってしまうような、驚くべき出来事が待ち受けていた。



 バッグから取り出した弁当箱を開けながら、泣きそうになる気持ちを必死に抑えて、鼻歌でお気に入りの曲を歌っていた。

 すると突然〈誰か、いるんですか?〉という男の声が聞こえた。



 慌てて周囲を見回した。しかし、誰もいない。怖くてベンチから動けなかったが、話しているうちに、彼は大学にいるということがわかった。



 私の知る限り、この公園の周りには大学など存在しない。そもそも、声はすぐ近くから聞こえるのだ。何かを媒介として声をやり取りしているような感じだ。
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