君と僕のキセキ
その男は、石が光っているというようなことを言った。石、という言葉に反応し、私もキーホルダーが光っていることに気付いた。そのキーホルダーは白い石で作られたもので、父親から渡されたものだった。昔からなんとなく、特別な力を感じる不思議な石だと思っていた。
男の声は、その石から聞こえていた。どうやら、彼も同じような石を持っていて、離れた場所にあるはずの石が互いの声を伝えているらしかった。
彼は、宗平と名乗った。
その名前を聞いた瞬間、もしかして……と思った。が、宗平という名前はそれほど珍しくない。きっと偶然だろう。
しかし、話せば話すほどに、私の知っている彼なのかもしれない……という予感も募る。自分から教えるのは下の名前だけと提案した手前、名字も教えてくださいなんて言えないし、答えを聞くのも怖かった。
明日もまた昼にこの場所に来る約束をして、彼との会話は終わった。
結局、お昼ご飯は食べ損ねてしまった。
学校に戻り、午後の授業を受けている間も、私の頭の中は先ほどの出来事に対する疑問で占拠されていた。
休み時間は一人だった。愛香たちは、私を除いた三人で楽しそうに話している。
いつの間にか放課後になっていた。明日からクラスでどう過ごして行けばいいのかという不安と、不思議な出来事に対する戸惑いを引きずったまま、私はバイト先の書店へと向かった。