君と僕のキセキ
休憩時間はバックヤードで、店頭から持ち込んだ漫画雑誌を読む。
週刊漫画雑誌は、目まぐるしく変化する。まるで、現代社会を象徴しているようだった。
ついこの前に始まったばかりだと思っていた作品が次々と終了し、また新しく連載が始まる。漫画の内容もバラエティに富んでいて、読者を飽きさせない。
海賊に死神、バレーボール。最近は将棋に悪魔召喚まで。全ての作品に違った魅力がある。
「お疲れさまです」
勤務時間が終了し、バックヤードでスマホをいじっていると、文月さんが入って来た。同じ時間に退勤のようだ。
「お疲れ」
「先輩、今ちょっと時間ありますか?」
文月さんは、僕のことを先輩と呼ぶ。これには二つの理由があった。まず一つ目に、バイトを始めたのが僕の方が先だからという一般的なもの。もう一つは、彼女が僕の通っている大学を目指しているという理由だ。
「うん。どうしたの?」
家に帰っても特にすることはない。コンビニで買った晩御飯を食べ、シャワーを浴びて寝るだけだ。
「この化学の問題がわからなくて」
文月さんは、僕の目の前のテーブルにノートを広げる。
「……ああ、気体の状態方程式ね」
彼女のノートには、綺麗な文字と数字が整然と並んでいた。
「はい。答えだけはわかっているんですけど、何回か計算してみても数字が合わなくって」
途中式を目で追う。一つひとつの式がきちんと整理されていて読みやすかった。