君と僕のキセキ
第2章 僕と君の軌跡
8.再会
知らない少女と石を通して会話をするという、不思議な出来事が起こった翌日。
あれはやはり夢だったのではないか。そんな思いが強くなっていた。
数合わせにとった興味のない授業を適当に聞き流し、昼休みにいつも通り小屋へと向かう。
木製のドアを開くと、キィ、という耳障りな音が響いた。内側は今日も相変わらず雑然としていた。まあ、それがかえって落ち着くのだが。
早速、バッグからお守りを取り出してみるが、何も反応はなかった。
お守りを膝の上にのせ、菓子パンの袋を開封してかじりつく。
十分ほどで食事を終えた。しかし、その間もお守りが光ることはなかった。
中から石を取り出して、手の中でもてあそびながら考える。やっぱり、昨日の出来事は夢だったのだろうか。自然と大きなため息がこぼれた。
伊澄(いずみ)という女性は、この世に存在しない。僕が作り出した幻想だった。
石を通じて遠く離れた場所にいる人間と会話するなんて、そんな不思議なことがあるはずがない。
そういえば、孤独な子どもが空想の友達を作り出すというような話を、小説で読んだことがある。イマジナリーフレンドと呼ばれる現象だ。
僕は自嘲気味に笑う。二十歳すぎのいい年した男が、寂しくて空想の友人を作るなんて、情けなくて笑えてくる。