君と僕のキセキ
しかしそれ以上に、残念だと思う気持ちが芽生えていて、僕は驚いた。
伊澄とは仲良くなれそうな予感があった。たった一回話しただけなのに、そんな気がしていた。まあ、それも当たり前か。僕が作り出した都合のいい存在なのだから……。
それとも、あれはやはり現実で、昨日だけ起こった特別な現象だったのだろうか。決まった時間にしか繋がらないなんて、いかにもありそうな設定ではないか。
そうでなくても、何らかの理由があって、石が不思議な力を発揮できていないという可能性だって考えられる。
まだ伊澄が現れる可能性に縋りついている自分に気付いて、みじめな気持ちになる。どうしても、僕の妄想で終わらせたくなかった。
彼女の存在が嘘であるという仮説を認めたくなくて、必死で抗って、強く願った。
もう一度、彼女の声が聞きたい。
そう思った瞬間――石が淡く光った。
そして、凜とした声が聞こえる。
〈すみません。先生を手伝っていて遅くなりました〉
少し息が荒かったが、透明感と芯の強さを併せ持つその声は、たしかに、昨日聞いた彼女のものだった。
「伊澄さん……ですか?」
〈はい。そうですよ〉
なぜだか僕は安心して、体から力が一気に抜けた。
緩みそうになった涙腺を慌てて制御しつつ、口を開く。
「……昨日のこと、夢じゃなかったんですね」
〈私も、同じことを今思ってます〉
なんだかおかしくなって、僕たちは同時に笑った。
昨日初めて話した相手なのに、今こうして、もう一度話せたことが無性に嬉しかった。