君と僕のキセキ
「いきなり特別な力が覚醒したり、学校でも有数の美少女複数人とお近づきになったり、弱小校に強い選手が集まってきたり、姿の見えない人と仲良くなったと思ったら意外と身近な人物だったり……」
伊澄は、少年漫画にありがちな展開を並べる。
「それは……ほら、フィクションだって割り切って楽しんでるんだよ。まさか自分がその漫画の主人公みたくなれるわけないんだし」
自分で言いながら気づいた。少女漫画も同じなのだ。
「少女漫画だって一緒だから。私たち女の子は少女漫画をファンタジーとして読んでるの。ドゥーユーアンダースタン?」
「はい。おっしゃる通りです」
年下の女の子に論破されてしまった。
そういえば、今自分の置かれた立場は、かなり漫画の主人公っぽいのではないか……。そんなことを考えてみる。
僕は常識を超えて、遠く離れた伊澄と出会ったわけで。不思議な石を媒介にして、二人は繋がっている。少なくとも客観的に見てリアリティはない。
特に話すことがないときは、本当にどうでもいいような、中身のない話をすることもある。
〈今日のご飯は何?〉
「今日は鮭おにぎりと、えーっと……カレーパン」
僕はコンビニのビニール袋の中を確認しながら答えた。
〈カレーパンか。いいなぁ〉
「カレー、好きなの?」
〈好き。特にお母さんが作るのが美味しいの〉
年相応の女の子らしいコメントに、僕は和(なご)む。
「へぇ。何か隠し味でも入れてるの?」
〈全然隠れてないんだけど、アサリが入ってる〉
一般的なカレーではではあまり見かけない具材だ。
「そうなんだ。シーフードカレーってやつ?」
〈うん。あ、そうだ。カレーについてはすごく面白い話があるんだけど……〉
「え、どんな話?」
自らハードルを上げるほどの面白い話とやらが気になって、僕は尋ねた。