君と僕のキセキ
「僕は、宇宙飛行士になりたいんだ。宇宙とか星とか、昔から好きで、いつか行ってみたいと思ってて」
〈宇宙飛行士、か。素敵だね。でもすごく厳しいんじゃなかったっけ? 宇宙に関する知識だけじゃなくて、英語も使えなきゃいけないし、体だって健康じゃないと〉
「そうなんだよね。しかも試験も不定期だし、倍率だって毎回百倍を超える。いつになるかわからないし、そもそもなれない可能性の方が高いけど、目指すだけならタダだし。っていうか、伊澄はなんでそんなに詳しいの?」
彼女が言ったことは、考えてみれば当たり前のことだったが、微妙に引っかかりを覚えた。
〈あ……私のお父さん、宇宙飛行士なの〉
そんな予想外すぎる驚愕の事実に、
「え、本当に? すごい! それ、もっと詳しく聞きたい」
僕は興奮して、声がうわずる。
宇宙飛行士は、憧れの職業として挙げられることも多いが、実際になるのは難しいはずだ。色々と話が聞きたかった。
しかし彼女は、
〈あー、また今度ね。それよりさ――〉
そんな風に話題を変えることで、僕の好奇心をやんわりと拒絶した。
それは、僕に話してしまったことを後悔するかのような声色で。彼女はなぜか、父親について話すことを嫌がっているようだった。
きっと何か事情があるのだろう。それ以降、伊澄の父親の話は、僕から進んで口にしないことにした。