君と僕のキセキ
10.友達未満の片想い
僕が伊澄に恋愛相談をすることにしたのは、彼女との声だけの関係が一ヶ月ほど続いた頃だった。
今のところ、僕と明李(あかり)さんは、偶然会ったら話す程度の関係だ。恋人未満どころか、友達未満である。良くて知り合いといったところか。
明李さんともっと親しくなりたいとは思っていた。しかし、恋愛経験値が皆無である僕は、どうすればいいのかわからなかった。知り合った際に連絡先は交換していたのだが、本の受け渡しのときに一度使ったきりだった。
これまでは話せるだけで満足だった。が、恋の病とは厄介なもので、明李さんと話すたびに、彼女が魅力的になっていくように思えてくるのだ。
もっと彼女に近づきたい。明李さんの特別になりたい。いつの間にか、そう思うようになっていた。
僕と明李さんでは、絶望的なまでに釣り合わないということはわかっている。だけど僕は、彼女をただの憧れで終わらせるには、好きになりすぎてしまっていた。
誰か相談できる相手がいればいいのだが、数少ない男友達に話してもからかわれるだけだということは目に見えていた。
類は友を呼ぶ。僕の友達もまた、ほとんど恋愛経験のない者ばかりだったのだ。そんな彼らに、真剣に相談などできるはずもない。
その点、伊澄なら信頼できるし、お互い名前しか知らないのだから、知り合いに伝わる心配もない。
それに、異性からならば、実用的なアドバイスがもらえるのではないかとも期待した。