君と僕のキセキ
あまり乗り気でなかった彼女だが、出会った経緯を聞くと〈えっ⁉ 何、その出会い方! すごくロマンチックじゃない! で、どんな人なの?〉と食いついてきた。やはり伊澄も年頃の女の子なのだ。
「どんな人、か。うーん、なんて言えばいいんだろう。すごく優しくて綺麗で、笑顔が素敵な人で、僕には絶対手が届かないような存在……かな?」
〈その人、神様か何か?〉
「そうかも。本当に女神様って感じ」
自分で言っておきながら、顔が熱くなる。今の発言は取り消したい。
〈重症だね〉
「もし僕がその人だったら、僕みたいな根暗男子は選ばないけどね」
自分で言いながら悲しくなってきた。明李さんの目に、僕はどう映っているのだろうか。
〈でも、同じ本がきっかけで知り合ったってことは、趣味は合うんでしょ?〉
「うん。逆にそれが唯一のアドバンテージなんじゃないかってくらい他に何もない。このままじゃ、一生憧れで終わるんだろうなーって」
〈一生って……大げさすぎでしょ。またきっと、いつか好きな人ができるって〉
伊澄が優しい声音で慰めてくれる。なんていい子なのだろう……って、違う。そうじゃない!
「ちょっと待って! 勝手に失恋させないで! まだ告白すらしてないから!」
〈あはは、バレた。ごめんごめん〉
「でも本当に、勝算がない」
口に出して他人に話すことで、明李さんに対する想いと、その恋の成就する可能性の低さを、改めて思い知らされた。
叶いそうにない片想いに、僕の心は憂鬱な青に染まる。