君と僕のキセキ
11.恋愛初心者
〈それなら、会ったときにお昼に誘うしかないね。同じ大学でしょ? それほど不自然じゃないはず〉
僕の意気地なし的発言に呆れつつも、伊澄は代替案を出してくれた。
しかし、自然か不自然か以前に、女性を食事に誘うことは、僕にとってハードルが高い。たぶん身長くらいあると思う。というか、直接会って誘う方が難しいのでは……。
「とにかく食事に誘うなんて、そんないきなりは無理だよ」
弱音が漏れる。
〈全然無理じゃないから。そんで全然いきなりでもないから。会ったら話すような関係を一年以上も続けてきたんでしょ? それくらいの距離感の相手に対して、お昼まだなんですか? よかったら一緒にどうですか? って。はい、これの何がおかしいの? 二十五文字以上三十文字以内で答えなさい!〉
「いや……あの、すみません。何もおかしくないです」
勢いに圧倒されて、僕は頷くしかなかった。
〈うむ。わかればよし〉
伊澄の方もノリノリになってきているような気がする。
〈あ! でもさ、会うときって向こうも一人なの?〉
「うん。いつも一人。他人といるところは見たことないな」
〈それってものすごくチャンスじゃない! むしろ今まで何してたの!? バカなの? アホなの?〉
酷い言われようである。一応僕の方が年上なのに。だが、その通りなので言い返せず「すみません」と謝ることしかできなかった。
石の向こうからは、大きなため息が聞こえる。