君と僕のキセキ

「いいよ」

「そうですよね。やっぱり僕なんかとじゃ……えっ!? 」

 伏せていた視線を上げる。黒目がちで清らかな瞳を真っすぐに僕に向ける明李さんは、女神にしか見えなかった。



「金曜日は、いつもお昼ご飯は一人なの。だから誘ってもらえて嬉しい。しかも時光くんに」

 明李さんは、紅い唇の隙間から白い歯を覗かせてはにかんだ。



 僕は浮かれて、返事ができなかった。頭がふわふわしている。そのままどこかへ飛んで行ってしまいそうだった。



「学食でもいい?」

 惚けている僕に、明李さんが聞いた。

「は、はい!」

「じゃ、行こっか」



 バッグの中には、昼食用に買った菓子パンが入っていたが、そんなものはどうでもよかった。明日の朝食にでもすればいい。



 百メートルもないはずの食堂までの距離が遠く感じた。華のある明李さんは人目を惹く。その隣を歩いているわけだから、必然的に僕にも視線が突き刺さるわけで。痛い。僕を見ているわけではないことはわかってはいるけど、それにしても落ち着かない。まだ授業中ということもあり、人が少ないのは幸いだった。



 大和学園大学には二つの食堂がある。僕たちが向かっているのは、第二食堂と呼ばれる施設だ。第二というだけあって、もちろん第一食堂も存在するが、メニューなどは同じで規模もあまり変わらない。



 昼休み前なので、まだあまり混んでいなかった。僕たちは、トレーを持って列に並ぶ。サンプルケースを眺めると、美味しそうな料理が並んでいる。

 昼食に、コンビニで買った菓子パンやおにぎり以外を食べるのはいつぶりだろうか。そう考えると、食欲が湧いてきた。
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