君と僕のキセキ
〈お、できた。本当に教えるの上手いよね。塾とか家庭教師とかやってるの?〉
「やってないし、やったこともないよ。あ、でも、たまにバイト先の後輩に勉強教えてる」
〈そうなんだ〉
「うん。その子もわかりやすいって言ってくれてるし」
文月さんのことだ。期末テストは上手くいっただろうか。
〈へえ。やっぱり教え方上手なんだ。その子は女の子?〉
「そう。この前、お礼に映画のチケットを渡されそうになって」
つい昨日の出来事だ。
〈渡されそうになって……ってことは断ったの?〉
「うん。気持ちだけでもありがたいし。それに二枚あったみたいだから、友達と行ってもらった方がその子にとってもいいと思っ――」
〈はぁ⁉〉
僕が最後まで言い終わる前に、伊澄の反応が届く。
「ん?」
何かおかしいことを言っただろうか。
〈二枚! わざわざ二枚のチケットを出してきたってことはさ! ねぇ! どういうことかわかってる⁉〉
わからない。ついでに、なぜ彼女がこんなにも怒っているのかもわからない。
「え? たぶん、二枚あるから片方あげますよ、ってことじゃ――」
〈バッカじゃないの⁉ 映画を一緒に見に行きましょうってことでしょ?〉
またもや台詞の途中で、尖った声に割り込まれる。
「え、どうして?」
伊澄は、こちらまで聞こえるような大きなため息を吐き出してから、衝撃的な発言をした。
〈その子はキミのことが好きなの〉