君と僕のキセキ
休み時間はいつも、教室の窓から外を眺めている。楽しく会話をしていた日々が、嘘みたいに懐かしかった。
でもなぜか、今の私は前よりも私らしいような気がしていた。
それに最近は、消えてなくなってしまいたい、と思うことも減った。
きっと、彼のおかげなのだと思う。きっかけを作ってくれた愛香たちには、今では感謝すらしている。
昼休みに公園に出かけるようになって、一ヶ月以上が経った。
小さな石から声が聞こえるのは不思議で、たまに怖くもなるけれど、彼と会話をするのは楽しみだった。ありのままの自分でいられるのだ。
そして、彼とのやり取りを繰り返すうちに、私の予感は確信に変わっていった。
大学二年生。宇宙の勉強。一途な片想い。何より、その優しい雰囲気。
石の向こう側にいる宗平という男は、私の知っている時光宗平で間違いない。
私の正体がバレないように、この関係を続けよう。今まで通り接していれば、彼はきっと、私の正体に気づかないままでいてくれるだろう。
隠したままでいるのは、なんだか嘘をついているような気がして罪悪感があるけれど、もし彼が私の素性に気づいてしまえば、今までとは同じように話せなくなってしまう。
思わず父の職業を話してしまったのは失敗だった。宇宙飛行士なんて、そう多くはいない。注意を払わなければ。
毎日のように話していると、私が知っていたのは彼のほんの一部分なのだとわかる。当たり前のことだけど、彼も一人の人間なのだ。私の知らないこともまだたくさんあるのだろう。
大きな夢のための、一途な努力を知った。
穏やかで不器用な、温かい優しさを知った。
一人の女性を強く想う、彼の純粋さを知った。
恋をしている彼は、とても素敵だと思った。
私も、頑張ってみようかな。柄にもなく、そんな気持ちが湧いてきた。
そのとき脳裏に浮かんだ先輩の顔を、慌ててかき消す。