君と僕のキセキ

 それにしても、何で恋愛相談なんか乗ってしまったのだろうか。

 彼らの出会いはロマンチックで、思わず首を突っ込んでしまったけれど、今では少し後悔している。



 応援したいのは確かだが、複雑な気持ちが邪魔をする。

 私は、上手く彼の友人を演じられているだろうか。

 最後まで、彼の恋を応援し続けることができるのだろうか。



 そして先日、彼と話しているときに、私は気づいてしまったのだ。

 もし彼の気持ちを、今の私が変えてしまえたならば――。



 バッグにつけられた白い石のお守りに視線をやる。

 これは、そのためのお守りなのだろうか。





 放課後にはバイトが入っていた。

 人気コミックの発売日が重なっていて、いつもより忙しかったように思う。余計なことを考えなくて済むため、ありがたかった。



 勤務時間を終えて、バックヤードで作業をしていた。学校の休み時間に頭の中でこねくり回したアイデアをまとめて、手のひらサイズの長方形に広げていく。



「お疲れ様ー」

 ドアが開き、先輩が入ってきた。

「お疲れ様です。先輩」

 少し早くなった心臓の鼓動。平然を装って返事をする。



「何やってんの?」

 先輩が横から覗き込んでくる。距離が近い!

「あっ、ちょっと、見ないでください!」

 慌てて手元を隠す。



「もしかして、ポップ?」

「はい。でもまだ途中なので」



 ポップとは、本の販売促進のための広告のようなものである。出版社から送られてきたり、店員が手書きで作ったりと、形態は様々だが、本を誰かに届けたいという気持ちは共通している。



 私もたまにポップに惹かれて本を買ってしまうことがあった。

 そして今、私は手書きでポップを作成していた。最近読んだ小説がとても面白く、もっとたくさんの人に読んでほしいと思ったのだ。
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