君と僕のキセキ

16.思い出は彼方へ


 僕が毎週金曜日に、明李さんとお昼をご一緒することになってから、約二週間が経過した。本のことはもちろん、明李さんのバイト先のカフェに来店した面白い客や、僕が実験中に経験したハプニングなど、様々なことを話した。



 その度に、新しい明李さんの一面を知ることができる。金曜日になるのが待ち遠しい日々が続いていた。

 しかし残念ながら、今日は月曜日。僕は閑散とした小屋で、伊澄と会話をしながら昼食を食べていた。



〈例の件は順調?〉

「うーん、特に大きな進展はないかなー」

 例の件というのは、明李さんへの片想いのことだ。同じようなやり取りを、すでに三、四回繰り返している。



〈先週も一緒にお昼食べたんでしょ?〉

「そうなんだけど、距離が縮まらないというか、彼女の方が一線を引いてる感じがあって。結局、当たり障りのない話しかしないで終わっちゃうんだよ」



 それでも、何でもないような会話を繰り返して、彼女の好きなものや嫌いなものがわかってきた。少しずつだけど、距離が近づいていることはたしかだ。



 しかし、恋愛に関する話題は明李さんからは出してこないし、僕も触れないようにしていた。最初に食事をした日に見せた、明李さんの哀しげな表情は気になるけれど、彼女が話したがらない以上、僕にはどうすることもできなかった。
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