眠れぬ夜に
ふと夜中に目が覚めた…

時計を見ると夜中の1時を少し回ったところ。
普段なら、こんな時間に目を覚ます事はないのに。

テーブルのタバコに手を伸ばす、薄暗い部屋の中でため息混じりに煙を吐き出しながら

「明日行けばやっと休みか…」
誰に聞かせる訳でもない、独り言。


ここ最近の忙しさは、普段の仕事量から考えると、尋常では無かった…
まだ暫くはこの忙しさが続くのかと思うと、
優鬱になるが、定期的な休みが来る。
それだけで少し気持ちが楽になった。

枕元に携帯電話が転がっている。
そういえば、アイツからの連絡を見てるうちに、寝てしまった事に気が付いた。

そういえば、飯食って無かったなぁ…そんな事を思いながら、キッチンへ向かう。

夕食…いや、夜食でも食うか。

「何かあったかな…」
冷蔵庫の中を見渡し、独り呟く。

一人暮らしが長いせいか、料理をする事は苦にならない、
むしろ楽しい方だ。

ただ時折湧き上がる、一人で味う食事の寂しさには、
いつまでたっても慣れない。

自宅で誰かと向かい合わせで食べる食事など、暫くしていないなぁ…夜食を作りながら、そんな事を考えていたら、ふと昔の事を思い出した。


そういえば、昔付き合ってた彼女の手料理を一度も食べた事が無かったな…

当時の俺は、彼女と付き合える事に舞い上がっていて、少しでも一緒に過ごす時間が欲しくて、俺の家に来る日は、料理の下拵えを済ましてから、彼女を迎えに行っていた。
そう、俺が率先して料理を作ってた。
毎日逢うには遠過ぎて、週末だけしか逢えない、そんなもどかしい距離を少しでも埋めようとしてたんだよな。

「若かったなぁ…」
なんだか恥ずかしくなり、苦笑いしながら呟く。

手料理を食べれなかったのは、彼女が料理下手とかでは無く、ただ作る必要が無かった、ただそれだけの事なのだ。



そういえば彼女と付き合いだしたのって確か、今ぐらいの時期だったな…
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