眠れぬ夜に
始まりは何でも無い事だった。
久しぶりに実家に帰って、友達が集まったその中に彼女は居た。
それが初対面って訳でもなく、連絡先だって既に知っていて、用が無いからそれまで連絡をしなかった、そんな関係だった。
今となっては何がキッカケで、再び話す様になったのか思い出せないけど、その日は彼女とたくさん喋った、その事だけは覚えてる。
それからはよく連絡する様になって、地元に帰る度に必ず逢っていた、そんな事を繰り返す内に、気がついたら彼女の事がとても気になる様になっていた。
毎日の様にメールしたり、電話したりして、その年の12月頃には二人だけで逢う様になってた。
正月休みも二人で出かけたりなんかしてさ。
その日は
『明日から仕事がだね、また暫く逢えなくなるね。』
なんて話をしながら正月休み最後の日に、二人で食事に出かけたんだ。
食事した後、
「まだ時間在るから、ドライブでもしない?」
って彼女が言うから僕も
「うん、そうだね。」
って答えて車を走らせたんだ。
もちろん僕は彼女と少しでも一緒に居たくて…
海沿いの道を走ってると明石大橋のイルミネーションが見えて来て
「綺麗だね。」
って二人で話ながらイルミネーションがよく見える海沿いの公園に車を停めて、明石大橋のイルミネーションを見てたんだよね。
寒く無い様にって、僕は近くに在った自動販売機で缶コーヒーを買って彼女に手渡した。
「ありがとう。」
そう言った彼女がとても素敵で、僕に向けてくれた笑顔が嬉しかった事を覚えている。
それからは色んな話をした。
仕事の事、友達の事、家の事、恋愛の事。
彼女は楽しそうに話してくれて、僕はそんな彼女を見てる事が楽しくて…
いくら車の中とはいえ、やっぱり冬だから寒い訳で…
二人でホットコーヒー飲みながら手を繋いで寄り添ってたんだ。
僕は信じられないくらい心臓がドキドキしていて、とてもじゃないけど彼女の方を見る事が出なかった。
君はどう思っているんだろう、僕の事を…
頭ん中じゃ、そればっかり考えてた。
けれど僕達は、明日からまた仕事で。
今の二人で過ごす時間にも、限りが在る訳で。
仕事が始まっても、逢えなくなるってほど遠距離ではなかったけど、彼女の方は土曜日も仕事が在り、逢う時間が限られてくる。
僕達は付き合ってるって訳じゃないし、彼女がこれからも僕と逢う事を優先してくれるとは限らない。
少なくとも嫌われている訳じゃ無いから、逢ってくれないなんて事は無いと思う。
けど、凄く不安で…
これからもずっと、君とずっと一緒にすごしたくて…
君のそばに居たくてたまらなかったんだ。
その時改めて思ったんだ
あぁ、好きなんだ…って事を。
僕の横で楽しそうに笑う、君が本当に好きなんだって。
「ん?どうしたの?」
いつのまにか君を見つめていた、僕の視線に気付き
僕の顔をちょっと不思議そうに覗き込む
君との距離は30センチと離れてなくて…
僕は自分の中の沸き起る気持ちが抑えられなくて、
繋いでいた手の温もりを感じながら、今のこの気持ちを知ってもらいたくて、僕の中で君がどれだけ大きな存在になっているのかを、知ってもらいたくて
僕は
君へのこの気持ちを、伝えたい、知って欲しい。
そう思ったんだ。
僕の変化を感じ取り、一瞬とまどった表情をみせたけど、すぐにまたいつもの笑顔で、僕を見つめ返してくれた。
その時の僕はホントに心臓がバクバクして、小心者の僕は何だか逃げ出したい様な、そんな気持ちだった。
君は視線を外し僕の肩にそっと頭を預け、握っている手をやさしく握り返してくれた。
その時、自分でも信じられ無い位に
素直に声に出せたんだ…
君への気持ちが、
君の事が…