誰にも届かぬ歌を
「鈴音(りんね)!」

僕の名前を呼びながら、少女が僕に近寄ってきた。僕は「おはよう」と挨拶をする。少女は「おはよう…ねぇ、鈴音」と僕を見つめた。

「どうしたの?」

「…鈴音、いつもありがとう。大好きだよ」

僕の彼女、河合 聖羅(かわい せいら)が微笑んだ。僕は聖羅の言葉に驚きを隠せなかった。

僕の名前は、水戸川(みとかわ) 鈴音。普通の高校2年生だ。僕らが高校1年生の冬に、聖羅から告白されて聖羅と付き合っている。

「…え?どうしたの…?急に…」

聖羅はそんなことを言ってくる子ではない。

「何となくかな」

聖羅が曖昧に答えながら、恥ずかしそうに言った。僕は思わず微笑んだ。
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