誰にも届かぬ歌を
学年の皆には何も言わず、僕は優太が通う学校へ転校した。家族とも無事に縁を切ることが出来、今では優太の家で暮らしている。
「お兄ちゃん…!」
優太の一つ下の弟、颯太(そうた)が嬉しそうに笑いながら僕に抱きついた。
「颯太、どうしたの?」
「気をつけて行ってらっしゃい!」
「ありがとう。颯太も気をつけてね」
僕は颯太に微笑んだ。颯太は「うん!」と僕に微笑み返してくれた。
「鈴音!早く来ないと置いていくよ!」
玄関から優太の声が聞こえてくる。僕は「今行くよ!」と優太の元に走っていく。
ありがとう、優太。優太のおかげで僕は強く生きることが出来ている。
僕は、優太に微笑んだ。優太も微笑み返してくれる。
夏の日差しが僕と優太に降りかかり、僕らを輝かせていた。