誰にも届かぬ歌を
僕が教室に入ると後ろから誰かに押されて転び、僕は机の角に頭をぶつけた。その衝撃で僕の体が崩れ落ちる。
顔を上げて周りを見渡すと、皆は無表情で僕を見ている。
――お前なんか家族じゃない。早く消えてよ
不意に僕の姉が、僕に放った言葉を思い出した。僕はその場から立ち上がろうとはせず、泣きたいのを耐えていた。
「鈴音くん。あんたさ…良い子ぶってて気持ち悪いんだけど」
――こいつ良い子な振りをしている…気持ち悪っ!
「…本当は優しくないんでしょ?優しい振りをして評判を上げているだけでしょ?」
――あっははは!!こいつ、優しい振りをしやがって!
クラスメイトが僕を罵る度、家族の言葉と重なって聞こえた。
何で僕が…?僕は今まで…何か嫌いになるようなことをした…?
「…っ」
僕は声を上げずに静かに泣いた。声を上げて泣くのが怖いから。
…こんな所で泣いたらダメだ。でも、でも…。
「泣くなよ!目障りだ!」
男子が立ち上がろうとする僕を蹴りながら言った。蹴られたところが痛む。
…僕の居場所はどこにあるの?誰か教えてよ…。