誰にも届かぬ歌を
「鈴音、探したよ。どうしてそんな所にいるの?」
その日の昼休み、僕は教室に居られずに図書室に来ていた。聖羅が僕を心配そうに見ている。
僕は無言のままでうつむく。聖羅は「言ってくれないと分からないよ?」と優しい声で言った。
なかなか話さない僕を見た聖羅は「…何があったのかは聞かないけど、話なら私が聞くからいつでも話してね」と僕に微笑みかけてくれた。
人から優しくされるのって初めて…嬉しいけど、少し戸惑うな…。
「…ありがとう」と僕は思わず微笑み返す。聖羅は満足そうにうなずいた。