誰にも届かぬ歌を



今日は交流会当日。会場に暗い気持ちで入ると、優太が「鈴音、久しぶり!」と寄ってきた。

優太が帰る前に「…鈴音が話してくれたことや俺と会ったことを隠して接するから、鈴音も合わせて欲しい」と言ったのだ。

「あ、優太じゃん!何年ぶりに会うのかな?」

「確か、俺らが中学生の頃だから…今から4年ぐらい前?」

「優太が転校してから、もう4年が経つのか…早いな」

僕は満面の笑みを浮かべながら、優太と話していた。そこへ1人の男子が近寄ってくる。

「君、鈴音くんと知り合いなの?」

「知り合いっていうか…友達だよ!」

優太が放った「友達」という言葉が僕の胸を締め付けた。…それが嘘だということは知っているのに…。

「…ふぅん。鈴音くんに近寄らない方が良いよ」

そう言って、男子は優太をどこかに連れていく。優太は不安そうな顔で僕を見つめていた。

「…あいつ、優しくしてもらいたくて友達を作っているんだよ」

誰かの声が僕の胸に突き刺さった。同じクラスメイトの人たちは、僕に聞こえるように悪口を言っている。

そこへ優太が戻ってきた。その表情は、とても辛そう。

「優太…」

優太は僕に近寄ってくるなり、僕の頬を叩いた。突然のことに僕は驚きを隠せない。クラスメイトは、僕を見てクスクスと笑っている

「鈴音は…俺を何だと思っていたの?何で…あの時、俺に全てを話してくれたんじゃなかったの!?」

「…え?」

「全部、聞いたよ!鈴音のこと…そして、聖羅って子のことを!鈴音、何で…真実を話してよ…っ。鈴音は、聖羅って女の子をいじめたって言ってたよ…鈴音がそんなことをするはずが無い!!」

「…優太、僕は――」

僕の表情を見た優太は、僕を引きずるように二人きりになれる場所まで連れてきた。

「優太、ごめんなさい…僕は……」

僕は泣きながら、聖羅のことを話した。話終えると、優太が微笑んだ。

「鈴音…ありがとう…正直に話してくれて。でも、あの時に話して欲しかったな。だって、俺と鈴音は親友じゃん!ううん…大親友」

「…大、親友…?」

「そう。俺と鈴音は…大親友」

優太は、僕を抱き寄せて言った。僕の空っぽだった心が満たされていく。

「…うん。そうだね」
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